院長ブログ
「ターニングポイント」
寺坂院長からのメッセージを紹介いたします。皆様にご覧いただけますと幸いです。
社会には地域や住民が存続を願うも消滅したものが沢山あります。その代表的なものが鉄路でしょう。私は田舎出身で高校時代は深名線というローカル線を使って通学していましたが、今はもちろん廃線となっています。地元の願いに反して北海道では今後も多くの路線が維持困難となり廃線となる予定です。鉄路など社会インフラが消滅することなどあり得ないと昭和時代には誰もが思っていました。人口減少、高齢化社会、バブル崩壊等の社会的要因もあったと思いますが、どこかにこの結果を変える転換点はなかったかと考えてしまいます。なぜなら病院も同じ道を辿っているかもしれないからです。
皆さんはコロナ直前2019年9月26日に厚労省が“再編・統合について特に議論が必要”とされる全国424の公立・民間病院名を発表したことを覚えているでしょうか?北海道は断トツの1位で54病院がリストに載りました。これらの病院は診療実績が低く、地域として非効率的な医療を招くとされ、病床数や診療機能の縮小が検討される予定でした。当然地域からの猛反発が予想されていましたが、厚労省は地域に適切な医療を存続するための策として覚悟を持って提示したはずです。限られたヒト・モノ・カネを効率良く利用し競争から協調への転換を図るつもりだったと思います。しかしその後社会は未曽有のコロナ禍となり、この案は延期されます。コロナは医療、特に地域医療の脆弱性を炙り出しました。入院病床が足りないとされた現状況では、厚労省が再び“再編・統合”案を提示することは難しいでしょう。それは私たちが地域医療を存続させる最後のチャンス(転換点)を逸したことを意味しているのかもしれません。
経営的に苦しかった多くの公立・民間病院はコロナの補助金によってなんとか生き延びました。しかしそれらの病院の多くはコロナ以前と診療や経営体制が変わっていません。さらにコロナの間に起こった患者さんの受診離れやコロナ融資の返済等が追い打ちをかけ急速で壊滅的な経営悪化が起こる可能性があります。2019年に提示されたロードマップでは再編・統合は6年計画とされていましたが、経営が悪化する中での6年は決して短くはありません。多くの医療機関が閉院し、コロナ最大の副作用が地域医療の崩壊だったと言われないことを心から願うばかりです。
災害や社会福祉では“自助・共助・公助”という言葉が使われます。病院の存続においてコロナ禍の補助金が公助、病院の再編・統合案が共助だとすれば、病院としては自助に注力しなければなりません。当院の自助の一環です。ヒトに関して職場環境の整備に力を入れています。育児による短時間勤務制度の対象年齢を3歳から10歳までに引き上げ、仕事と家庭の両立を図っています。また美味しい職員食堂の昼食は300円で提供し、飲料の自動販売機も無料にしています。残業ゼロを目指し積極的にDXにも取り組んでいます。モノに関しては医療安全の観点から古くなった医療機器は躊躇なく更新し、最新の医療を提供するための設備投資は積極的に行っています。その高額な医療機器を地域に開放するオープンファシリティを実践し、近隣の整形外科の患者さん等が当院のMRIを利用しています。カネに関しては病院の医業収益や経常利益を“見える化したことが最大の改革です。決算はホームページでも公開し病院の利益は賞与で職員に還元する方針としています。
第2回「ほっかいどう学」では、当院が存続のために行っている小さな“自助”の一片をお聞き頂きました。功を奏して我々の病院が存続していけるか見守って頂ければ幸いです。
なお、こちらのメッセージは、9月30日に公益財団法人北海道生涯学習協会が発行した「生涯学習」会報第138号の「ターニングポイント」と題して、寺坂俊介理事長・院長が寄稿いたしました。