札幌脳動脈瘤コラム
第1回:脳動脈瘤(その1)
脳動脈瘤は、存在しているだけでは症状はないので持っていても気づきませんが、あるとき突然前触れなく破裂して、くも膜下出血を起こす可能性があります。
くも膜下出血は、その約半数が直接生命にかかわりますので、とても重要な脳卒中のひとつです。
現代では、脳ドックや他の目的で行われるMRIの検査で、体の負担なく動脈瘤を発見することができます。
未破裂の状態で動脈瘤の存在を発見できれば、それを治療しておくことで、くも膜下出血を防止することができます。
未破裂脳動脈瘤が発見された患者さんには、動脈瘤の病態や治療法など、じっくりと時間をかけて説明し、方針を一緒に考えていただくことを大切にしています。
サイズが非常に小さいものや、部位によっては、経過観察でよい場合もありますが、治療法としては大きくわけて開頭手術か血管内(カテーテル)手術かに大別されます。
開頭手術と血管内手術には、それぞれの特性がありますから、動脈瘤の条件と照らし合わせて開頭手術チームと血管内治療チームが連携し、患者さんと話し合いながら、最良の治療法を選択していきます。
脳動脈瘤の開頭手術について
開頭手術は、皮膚を切開していったん頭蓋骨の一部をあけて、手術用の顕微鏡で見ながら脳の皺を分けて動脈瘤に到達し、その動脈瘤の入り口部分にクリップをかけて閉鎖する「クリッピング術」が基本的な方法です。動脈瘤の形状は立体的で複雑なものですが、様々な形状のクリップを駆使して3次元的に閉鎖線を作り上げて、大小の正常血管を保ちながら動脈瘤を根本から消滅させることが可能です。動脈瘤の入り口を直接閉じ合わせるので、治療効果が永久的で根治性が高いところが、開頭手術の最大の長所になります。
一部の大きな動脈瘤や部分血栓化した症例では、通常の単純なクリッピング術ではなく、バイパス手術を組み合わせて治療します。いずれの手術法においても、治療の正確性と安全性を高めるため、リアルな複合的3次元画像や仮想現実ナビゲーション、術中血流解析などのツールを駆使して手術を行います。
入院の流れ
手術治療を行う際は、手術の前日に入院いただき、術後は皮膚の抜糸まで1週間、その間に通常は食事も歩行も普通にできるようになり、抜糸した翌日ないしは数日後に退院になりますので、全体で10日くらいの入院期間になります。
髪の毛は、皮膚切開する線に沿って分けて、数ミリだけ剃りますが、外から見ると手術したことがほとんど分からない状態で日常生活に戻っていただきます。
退院時には必要に応じて痛み止めなどをお渡ししますが、継続して服用いただく投薬はとくにありません。定期的な画像検査はMRI程度で十分です。
次回は、脳動脈瘤(その2)として、血管内手術についてお話しします。