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第7回:顔の異常アレコレ
顔の異常で病院をかかられる際は1. 動かしづらい(麻痺)、2 .しびれや感覚が鈍い(間隔低下)、3 .ぴくつきなど異常な動きがある、4 .痛みがあるといった症状があります。特に麻痺やしびれ、感覚低下は脳卒中でも出現することがしばしばあるので脳外科での診察、MRIによる確認が重要です。
ただしこれらの症状は、脳卒中以外の特別な理由で起こることもあり、治療可能なことがあります。
その代表的な病気を3つ説明します。お悩みの症状に当てはまるところがあれば、その症状を解決できるかもしれません。
1. ベル麻痺(特発性末梢性顔面神経麻痺)「顔が動かしづらい」
顔面神経の末梢の枝が障害を起こしてしまうことで突然まぶたが閉じづらくなったり、口の閉まりが悪くなったりします。特徴的なのは額のしわ寄せができなくなることです。末梢に対し、中枢である脳が原因で起こる顔面神経麻痺では額のしわ寄せができることがほとんどです。そこで見分けるポイントは額の動きであることが知られています。
治療についてはステロイドによる薬物療法がだいじです。加えて神経の回復を促すビタミン剤や抗ウイルス薬なども用いることもあります。症状発現から治療開始までは早いほうが改善を期待しやすく、早期の受診・加療をおすすめしています。
2. 三叉神経痛 「顔が痛い」
この病気は正常な神経が正常な血管に接触してしまうことでおこります。
顔面の感覚を司る三叉神経に、血管がぶつかっていると、血管の拍動が神経に伝わり、異常放電が起こり、痛みを引き起こします。片側にでて、三叉神経の枝にあわせて前額部(第1枝)、目の周りから上顎部(第2枝)、下顎部(第3枝)と痛む範囲が決まっていることも多いです。痛む場所によって、歯科疾患と間違われることもあります。三叉神経痛は突発的に痛みが起こり、食事や冷水などの刺激が引き金となりやすく、程度が強いと食事や飲水もままならなくなります。治療は薬物療法の他、局所麻酔による疼痛緩和もありますが、根本的な治療については手術で血管を神経から離してあげることが求められます。
3 .片側顔面けいれん 「顔がぴくつく」
この病気も正常な神経が正常な血管に接触してしまうことでおこります。
顔面神経は運動神経として顔の運動を行います。しかし血管の拍動が直接神経にぶつかると異常放電が起こり、顔面けいれんとして顔の片側にピクピクした異常運動が生じます。
顔面けいれんは目の周りや口の周りの筋肉が影響を受けやすく、発作的に異常運動を繰り返してしまいます。頻度が増えると人と対面する際、心理的な負荷が強まりますし、悪化すると顔面麻痺まで伴うことがあります。治療は3つあり、まず内服治療を行うことが一般的です。内服治療では抗てんかん薬が有効であることが多いです。しかし、効果が十分に得ることができない場合や、皮疹等の副作用で継続できない場合もあります。顔面けいれんについては、ボトックス注射で一時的に顔面を軽い麻痺にさせることでけいれんを抑えることもできます。これらの治療で症状をコントロールできなくなった場合は手術で血管の位置をずらすことで、神経への接触を外してあげることが求められます。多くは直後から症状が改善しますが、長期間罹患していた場合は改善に時間を要すことがあります。
血管と神経の接触を見つけ、外す
三叉神経痛と片側顔面けいれんについてはいずれも正常な神経が正常な血管にぶつかってしまい、症状を引き起こします。では当たっている血管を見つけるためにどのような検査を行うべきでしょうか。
MRIは脳卒中を検索するだけでなく、ここでも有効です。しかし通常よりも空間分解能の高い細かい撮像方法が、圧迫された神経と圧迫している血管を見つけるのに役立ちます。時には腫瘍などによる圧迫の原因が見つかることもあります。これに加えて、病歴をよく吟味し手術による改善が期待できるか判断します。
手術では、血管が神経を圧迫されて残る痕跡(圧痕)を確認し、圧迫を解除して症状が改善を図ります。また電気生理学的検査を用いて、全身麻酔中も聴力など正常機能が保たれているかを確認しながら。 安全に手術を行うこともだいじなことと考えます。