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第6回:血栓回収療法

第6回:血栓回収療法

突然さっきまで動いていた手足が動かない、しゃべろうと思っても口が回らない、会話が成立しない。脳卒中は突然発症し、人々の元の生活を奪う恐ろしい病気です。脳卒中は一般的に、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血をまとめた表現であり、脳出血は血管(動脈瘤)が破綻する病気で、脳梗塞は血管が血栓によって詰まる病気です。今回はこの脳梗塞の治療について説明します。

脳の血管と脳梗塞の治療

大脳を栄養する血管は前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈という3本の主幹動脈から構成され、それぞれ左右対象に存在します。この主幹動脈は直接脳内を走行しておらず、前頭葉、側頭葉、頭頂葉などを分ける脳の大きな皺(脳裂)の間を走行しています。そして主幹動脈は多数の枝を出しており、この枝(穿通枝)が直接脳に血液(酸素)を供給しています。同じ脳梗塞でも閉塞する血管によって治療方針は大きく異なり、穿通枝が詰まるタイプの脳梗塞は薬物治療による再発の予防とリハビリテーションが主な治療方法となります。
一方で、主幹動脈が閉塞した場合には、閉塞した血管が栄養している脳の領域が広いことから症状が重症で、放置することで致命的になることもあります。しかし、この主幹動脈が閉塞するタイプの脳梗塞は適切な時間内に閉塞した血管を再開通させることで劇的に症状を改善させることも可能です。従来、この主幹動脈閉塞に対してはt-PAと呼ばれる血栓を溶解させる薬物治療が行われていましたが、現在はカテーテルを用いた血栓回収療法と組み合わせることで治療成績が飛躍的に向上しました。当院においても積極的に行っており年間約40例ほど治療しています。

脳主幹動脈閉塞症例のMRI

経皮的血栓回収療法

経皮的血栓回収療法で使用するカテーテルは基本的に鼠径部の大腿動脈から挿入します。そこから閉塞した血管にマイクロカテーテルを誘導し、カテーテルを通して血栓回収デバイス(道具)を用いて再開通を試みる治療です。
現在、日本では血栓を絡め取るデバイスと、血栓を掃除機のように吸引するデバイスがそれぞれ単独、もしくは併用して使用されています。

血栓回収療法の流れ

治療のカギは時間

主幹動脈の閉塞による脳梗塞は時間とともに拡大します。上記経皮的血栓回収療法は治療に用いるデバイスの進歩により、発症からの治療可能な時間が延長しており、現在は発症から最長で24時間以内であれば治療を行うことが可能です。しかし発症から再開通までの時間が早ければ早いほど脳梗塞の拡大が抑えられ、より多くの脳を救済することが可能になるのです。(1)片側の手足が動かない(2)呂律が回らない(3) 思ったことが言葉にできない、言われたことを理解していない(4) 意識障害があるなど、脳卒中を疑う症状が出現した際には一刻も早く医療機関を受診し検査を受けてください。