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第4回:頭をぶつける!?(高齢者編)

第4回:頭をぶつける!?(高齢者編)

第1回の“頭をぶつける”では子供の頭部打撲とスポーツによる頭部打撲を取り上げましたが、今回は高齢者の頭部打撲に関して注意しなければならないことをお知らせします.

院長 寺坂 俊介

今から30年前に私が研修医だった頃、夜間の救急には酒に酔った交通事故の方が数多く搬送されてきました。昭和の終わりから平成の初めは頭部外傷といえば交通事故でした。しかしその後シートベルトの義務化やエアーバックの標準装備などの行政努力によって交通事故、それに伴う頭部外傷が大幅に減少しました。グラフは2014年から2018年までの外傷の受傷機転をまとめたものです。ご覧のように高齢者の外傷の受傷機転は圧倒的に転倒が多くなっています。

受傷機転別患者数の年齢分布
グラフ:外傷の受傷機転

高齢者の頭部外傷の経過は成人のそれとは少し異なります。高齢者では軽微な外傷、たとえば尻もちをつく程度の転倒でも入院を要するような頭部外傷に進展することがあります。何故でしょうか?
その原因の一つに抗血栓薬の服用があります。高齢者は抗血栓薬を飲んでいる方が少なくありません。これは体内にできた血の塊が、血管を詰まらせてしまう病気に対して治療や再発予防の目的で飲む薬です。これには抗凝固薬と抗血小板薬という2種類があります。抗凝固薬を使う代表的な病気が心房細動です。また抗血小板薬は脳梗塞や心筋梗塞を起こした後、再発予防のために服用する場合があります。
これらの薬は血液を固まりにくくする効果がある一方で、出血を起こすと血が止まりにくくなるというリスクがあります。転んで頭を打撲すると、頭蓋骨と脳の間に血液が溜まり脳を圧迫する硬膜下血腫を起こすことがあり注意が必要です。硬膜下血腫は、急激に症状が悪化する急性硬膜下血腫と、徐々に血液が溜まっていく慢性硬膜下血腫があります。写真1は急性硬膜下血腫で矢印の部分が出血です。急性期の出血はCTで白く見えます。急性硬膜下血腫では全身麻酔下での開頭手術が必要になることもあります。

急性硬膜下血腫のCT画像
写真1:急性硬膜下血腫(矢印の部分が出血)

慢性硬膜下血腫は頭部外傷後の慢性期、通常1-2カ月後に頭痛、歩行障害、認知症などで発症します。慢性期に発症する原因は解明されていませんが、抗血栓薬の服用が発症に影響するといわれています。その他お酒をよく飲む方や癌の治療をしている方も発症しやすいといわれています。
写真2は慢性硬膜下血腫で矢印の部分に血液が溜まっています。慢性期の血腫ですので必ずしも白くはありません。矢印の側には脳のシワ(脳溝)が見えなくなっているのがわかります。治療は局所麻酔の手術が主流です。頭蓋骨に小さな穴を穿ち、ここから細いチューブを入れて溜まった血液を排出していきます。1時間以内に終わる手術ですが、再発も稀にあります。

慢性硬膜下血腫のCT画像
写真2:慢性硬膜下血腫(矢印の部分で血液が貯留)

認知症の方で抗血栓薬を服用している方は周囲のサポートが重要です。転倒しても本人がそのことをうまく伝えられないケースもありますので、症状がはっきりわからなくても頭部にコブや皮下血腫などがあった場合には医療機関の受診させてください。
代表的な抗血小板薬と抗凝固薬の一般名を羅列しておきます。参考にしてください。

  • 抗血小板薬:アスピリン・クロピドグレル・シロスタゾール・チクロピジン
  • 抗凝固薬:ワーファリン・リバーロキサバン・アビキサバン・エドキサバン・ダビガトラン