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第3回:パーキンソン病 〜高齢化社会のCommon Disease〜
パーキンソン病はパンデミック状況にある
「パンデミック(Pandemic)」という言葉は、非常に多くの数の感染者や患者を発生する流行を意味するもので、新型コロナウイルス感染症で広く使われています。最近 、非感染性疾患であるパーキンソン病が、パンデミック状況にあるという衝撃的な報告がありました。パーキンソン病患者数の増加は非常に急速で、アルツハイマー病の増加を凌ぐものになっています。1990年から2015年にかけて世界のパーキンソン病の有病率は2倍以上になっており、高齢化に伴い、今後さらに、発症者数増加が推測されます。全世界におけるパーキンソン病患者数は2015年の690万人から、2040年では2倍以上の1420万人に増加すると推定されています(図1)。 日本は超高齢社会(65歳人口>21%)にあり、今後さらに高齢化が進むため、当然、日本でも患者数は増加すると考えられています。
パーキンソン病とは
私たちの体は、脳からの指令が筋肉に伝わることのより動いています。この脳の指令を調節し、体の動きをスムーズにしているのが「神経伝達物質」の一つであるドパミンです。パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン神経細胞がこわれて、作られるドパミンが減ることにより発症します。高齢になるほどパーキンソン病を発症する割合が増えますが、40歳以下で発症することもあり若年性パーキンソン病と呼んでいます。なお、患者さんの数は10万人に100人~150人くらいですが、60歳以上では10万人に約1,000人と多くなっています。わが国では約18万から20万人の患者さんがおられます。
特徴的な症状は、静止時振戦(せいしじしんせん)、無動(むどう)、筋固縮(きんこしゅく)、姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)の4つの運動障害です。便秘、不眠、立ちくらみ、易疲労など非運動障害も見られることがあります(図2)。
パーキンソン病の診断
診断にはまず専門である脳神経内科を受診して頂き,問診(詳しく何時からどうの様な症状があるか伺う)、神経学的診察を行うことが最も重要です。パーキンソン病では脳CT、MRIでは通常異常が見られませんが、最近はDat Scanという核医学検査で脳内のドパミン神経の減少を確認できる様になり、診断に有用です(図3)。
パーキンソン病の治療
薬物療法とリハビリテーションが中心となります。パーキンソン病では、毎年の様に新薬が発売され、お薬の選択肢が増えて来ています。L―ドパを始め歴史あるお薬も有効です。脳神経内科ではこれらのお薬を患者さん毎に細く調整して使用します。またリハビリテーションはお薬と同じくらい重要です。自宅でも十分可能ですが、当院ではご希望の方へは外来、入院でのリハビリテーションを提供しています。
動きづらさ、歩きづらさなど感じた時は、単に年齢のためと決めつけず、一度脳神経内科(神経内科)へご相談下さい。