脳血管内治療と脳外科手術のベストバランスを目指して
脳血管内治療は近年、治療の有効性や安全性も飛躍的に向上し、国民が求める低侵襲医療の代表の一つに成長しつつあります。血管内治療は一般的に低侵襲といわれますが、安易に治療し術後に再発を繰り返すようではけっして良い治療法とはいえません。当院の強みは脳血管内治療と外科手術の‘‘いいとこどり‘‘ができ、患者さんにとってハイレベルで最適な治療法の選択肢が提供できることだと考えています。
当センターは脳血管内治療が脳卒中医療の重要な治療モダリティとして、また脳神経外科手術の治療オプションの柱として、さらに認知度を高めこの治療の恩恵を一人でも多くの患者さんが享受できるように努めていくことを目指しています。
脳血管内治療センター センター長
菊地 統
脳血管内治療センターのロゴマークについて
脳血管内治療センター Hakuyokai Neuroendovascular Therapy Center (HyNET)のロゴマーク
当センターのロゴマークは脳血管内治療の中心的なデバイス(治療器材)であるステントがモチーフになっています。中央の暖色のグラデーション部分は捕らえられた血栓などを示していますが、単に治療するということだけでなく「安心」や「希望」など温かさを感じてもらえるようなデザインとしていただきました。我々はこのステントのモチーフに様々な思いを込めました。また横に連なる縦線は血管内治療で用いる様々なカテーテル(器具)を表しており、繊細な形状によって技術の高さも表現しています。
ステントは金属でできた網目状の筒で、血管内腔を保持するために生まれましたが、現在も様々な目的を果たすための進化を続けており、脳血管内治療の歴史はステントの登場と進化の歴史そのものと言っても過言でありません。
- 1977年
グルンチッヒらによってバルーンカテーテルによる冠動脈治療が初めて施行されました。バルーンカテーテルの欠点(解離や急性閉塞)を補うべくステントが登場したのは1980年代になってからで脳血管内治療はその後循環器科のカテーテル治療技術を応用することから始まりました。 - 1980年代
バルーンカテーテルの欠点(解離や急性閉塞)を補うべくステントが登場します。脳血管内治療はその後循環器科のカテーテル治療技術を応用することから始まりました。 - 2008年
頚部内頚動脈狭窄症に対するカテーテル治療として頚動脈ステントが日本で認可され、血管内腔が狭窄した頚動脈を切開することなく元の太さに拡げることができるようになりました。このモチーフは単に狭窄した血管を拡げているだけではなく、頚動脈治療の新たな選択肢・新たな歴史が生まれた瞬間を捉えているようでもあり、まさに脳血管内治療の希望に満ちた未来を切り拓く様も表しているといえます。 - 2010年
脳動脈瘤塞栓用ステントが日本で認可されました。このステントの登場により脳血管内治療にはこれまで不向きとされていた瘤の入り口が広い(広頚)動脈瘤に対して塞栓コイルが瘤外に飛び出ることなく留置が可能となりました。さらに2015年にはフローダイバーターステントが日本で認可されました。母血管に展開することで瘤内への血液流入を減じ、瘤の自然な血栓化・治癒を促すという画期的治療で、コイル塞栓の課題であった再発リスクを格段に抑えることに成功しています。我々はこのロゴマークに動脈瘤とともに患者さんの憂いや悩みも同時に封じたい、そのような思いも込めています。 - 2014年
脳血栓回収用デバイス(ステントレトリーバー)が日本で認可されました。血栓溶解剤の投与が間に合わなかったケースや投与後も再開通が得られず放置すれば大きな梗塞巣が生じてしまうようなケースでも、このステントの登場で直接血栓を取り除き危機を回避することが可能となりました。このステントは不幸にも脳梗塞で搬送となった患者さんの脳血栓だけでなく患者さんやご家族の心配や不安をも取り除くものでありたいと願っています。