011-876-9100(代表)
緊急の方は24時間365日対応

文字サイズの設定

背景色の設定

緊急の方24時間365日対応

TEL.011-876-9100(代表電話)

当院は二次救急指定病院です。
あせらず、可能な範囲で症状をお伝えください。

血管内治療について

脳血管内治療とは

脳血管内治療は腕や大腿の動脈などからカテーテルと呼ばれる直径数ミリの細い管を挿入し、血管撮影装置で得られる画像のもと脳の血管系に導き、カテーテル先端からコイルやステントなど様々なデバイス(治療器材)を挿入して治療を行います。
傷はカテーテル挿入部の数ミリ程度であり、頭皮を大きく切開したり頭蓋骨に穴を開けたりせずに治療するため一般的に低侵襲で術後の回復が早いことが長所と言われています。

代表的な疾患

脳動脈瘤

カテーテルからプラチナコイルと呼ばれる非常に柔軟で微細な金属線を脳動脈瘤内に挿入・充填する「動脈瘤コイル塞栓術」が従来から行われてきた基本的な方法です。脳動脈瘤内部が閉塞し、血流が遮断されることで脳動脈瘤の破裂を予防することができます。開頭術では到達が困難な脳深部の動脈瘤では、血管内の方がアプローチしやすいことがあります。(脳表側の血管はこの反対で、開頭術でアプローチしやすいですが血管は末梢部となるため血管内からは非常に遠く、難しいこともあります。)またスパスム期と呼ばれる発症4日目から14日目に搬送となった破裂動脈瘤(くも膜下出血)の場合、開頭術ではスパスムを悪化させ虚血性合併症のリスクが上昇することから、比較的リスクの低い血管内治療が威力を発揮することもあります。脳動脈瘤の特性によっては単純なコイル塞栓術では対応できない場合もありますが、バルーンカテーテルやネックブリッジステントといった支援デバイスを駆使することにより治療可能となるケースも格段に増えました。近年ではフローダイバーター(FD)治療と呼ばれ、動脈瘤直下の血管に緻密なメッシュ構造のステントを展開することで血液の流れを変化させ瘤内の血栓化を促す治療法も開発され、従来のクリッピング手術やコイル塞栓術が難しかった巨大な動脈瘤などに対しても治療が可能となってきています。

急性期脳梗塞(脳主幹動脈閉塞症)

この疾患の治療法も日進月歩で、新しい器材や新しいテクニックの登場で進歩の目覚ましい分野です。代表的なテクニックはカテーテル先端を血栓まで誘導し、カテーテルの手元側に吸引ポンプを繋げて血栓を掃除機のように吸い取る方法とステントに血栓を絡ませて引き摺り出す方法があります。両方を組み合わせるテクニックも行われており、短い時間でより確実に血栓を回収することを目指します。細い吸引カテーテルやステントの登場でよりやや末梢側に飛んだ血栓の回収に挑むこともありますが、血管の損傷による脳出血などの合併症も十分考慮する必要があり治療の引き際も重要です。また血栓を回収し完全に再開通した場合でもすでに梗塞を生じた組織から出血することもあります。出血や脳の腫脹が著しい場合は減圧開頭術を要することもあります。

内頚動脈狭窄症

左右の大脳半球を養う首の動脈が片側、あるいは両側とも動脈硬化で狭くなってしまう疾患です。外科治療は大きく2通りありますが、直達手術(頚動脈内膜剥離術)と血管内治療(頚動脈ステント留置術)では治療コンセプトが全く異なります。直達手術は分厚くなった血管の壁を切開して剝ぎ取る根本的な治療となり、血管内治療は細くなった部分をバルーンやステントで拡げ、血液の通り道を確保するという、からだへの侵襲をなるべく減らして実利にかなうような治療です。方法は全く異なりますが合併症などのリスクや治療成績はほぼ同等と考えられています。病変の状態でどちらが有利か検討することもありますが、この血管内治療は手術時間が1-2時間程度と短く、局所麻酔下で施行可能なので患者さんの全身状態などでこちらを勧めることもあろうかと思います。
 

脳硬膜動静脈瘻

脳血管内治療医としての技量が試される疾患です。病気の中核となるシャントポイント(静脈に動脈血が流れ込んでしまう穴)の同定と確実な閉塞が治療結果に結びつきます。静脈側からカテーテルを誘導する場合と動脈側からアプローチする場合があります。動脈側からは主に液体の塞栓物質を流し、静脈側からはコイルなどを充填することによってシャントポイントを閉塞させます。血管内治療でも手術が長時間に及ぶことも少なくありません。また病変の位置によっては血管内治療より開頭術を勧める場合もあります。

脳動静脈奇形

脳動脈瘤とならびくも膜下出血の原因となる血管奇形です。動脈側から液体塞栓物質を流して閉塞させる治療が一般的ですが、単独で根治させるというよりは開頭摘出術前に摘出の妨げになる血管や奇形を部分的に塞栓させる補助的な役割が主体となります。術前にえられた3次元画像をもとに開頭術チームと入念に治療戦略を検討します。例えば開頭野の深部から奇形に流入する血管などを塞栓させる、などです。脳動静脈奇形が敵の本陣、開頭摘出術が前方から進軍する味方の本軍とすると血管内治療は敵の裏から密かに攻め込み、敵の補給路を断つ別動隊、といったイメージでしょうか。

脳腫瘍

脳腫瘍も脳血管内治療は根治を目的としたものではなく、摘出前の補助的治療というスタンスです。脳腫瘍も様々であり、まるで血管の塊のような非常に血管に富む腫瘍は、切開や摘出時にとめどなく出血が続き視野の確保が困難となるものもあります。術前、脳血管撮影検査を行うと腫瘍部に細かい栄養血管が多数収束していくものは腫瘍血管塞栓術の良い適応と考えられます。マイクロカテーテルを腫瘍血管に進め、粒状塞栓物質や液体塞栓物質を流しこみ腫瘍内の微細な血管をも塞栓したり、コイルで腫瘍の栄養血管を根元から閉塞させます。患者様には実感しにくい治療かもしれませんが、摘出時の出血が抑えられ手術操作が容易になった、と開頭術者からの言葉をいただくと脳血管内治療医としては大変やりがいを感じる治療です。